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似鳥鶏さんの講演会を行いました!(講演時間内に答えられなかった質問の回答を掲載しています)
2025年3月15日(土)にアキシマエンシス体育館にて、「中学高校生の読書フォーラム2025」を開催しました。
第3部では、作家の似鳥鶏さんをお迎えし講演していただきました。
第1部で行った「中学生のビブリオバトル」の参加者一人一人に向けての講評や小説ができあがるまでの過程など、楽しくお話してくださいました。
直筆イラストをスクリーンに映しながら、ユーモアあふれるお話で会場は大変盛り上がりました。
講演時間内に答えられなかった質問の回答を、似鳥さんよりいただきましたので、そのままの文面で掲載いたします。
Q.「小説家になろうと思ったきっかけは?」
A.高校の頃、友達とチームを組んで『RPGツクール』というゲームをやっていました。RPGを自分で作れるゲームです。ですが「作りたいゲーム」がメンバーごとにバラバラで揉め、チームを抜けました。
その時、「小説で書けばいい。小説なら1人で好きなことがやれる」と思いました。
書いたものは誰かに読んでもらいたくなります。今のように投稿サイトなどがなかった時代ですので、新人賞に応募してプロになるしかない、と考えておりました。
当然ながら、職業としての小説家は「進路」としては全く考えておらず(宝くじを当てるようなものですので……)、商業出版は「一生、挑戦し続ける目標ができた」程度の認識でした。
Q.「本を書いている時、どんな気分で書いていますか?」
A.私は感情移入型で、笑えるシーンは笑っていますし泣けるシーンは泣いております。以前怖い話を書いたら、それが怖くなって夜道で後ろを振り返る回数が増えました。自家中毒です。
これは書き手によって様々で、愛されたキャラが死ぬシーンを鼻歌まじりに書く人もいます。
Q.「小説の舞台はどうやって決めていますか?」
A.書き手によって様々ですが、私の場合、ストーリー上、実在の地名を使って特定した方がいい場合は町の規模、東京からの距離、海があるか否か、言葉のアクセントは……等の要素を考慮して、ストーリーに合う町を選びます。特定の地名が必要ない場合はなんとなくイメージに合いそうな町を地図で探し、ストリートビューなどを参考にしながら町の設定(人口はどのくらい? 駅前に何がある? 等)を決めます。
ショートショートなどで詳しい舞台の設定が要らない場合、千葉(地元)ということにして書いてしまいます。
小説家には「特に舞台を決めなかった場合、自分の地元のイメージで書く」癖があります。たとえば米澤穂信先生に「ちょっと田舎」を書かせると、全部岐阜(米澤先生の地元)っぽくなって、海の気配が全くなくなったりします。
Q.「好きな作家は?」
A.よく考えてみたら、図書館でビブリオバトル大会後に記念講演をしたのにこの話をしていなかった、ってけっこうすごいですね。
小学校から中学校の間にドハマりしたのが星新一先生で、『おーいでてこーい』等は教科書にも載っていますね。『ようこそ地球さん』『午後の恐竜』等、初期のショートショート集が特におすすめ。主に新潮文庫で出ています。
それから高校以降、オタクの友人の薦めでハマったのが筒井康隆先生。50音が1文字ずつ消えていく(その音を含む単語が表すものも一緒に消えていく)世界を描く『残像に口紅を』(中公文庫)が少し前にバズりましたが、ああいう実験的なことを色々されている作家です。「自薦ホラー短編集」のシリーズ(新潮文庫)や『夢の木坂分岐点』『ロートレック荘事件』(どちらも新潮文庫)等、おすすめは山ほどあります。語らせると長いです。
Q.「〆切が近いのに筆が進まない時は?」
A.〆切付近になるとだいたい原稿も後半に来ており、ミステリの場合、書くことが決まっているので、筆が進まない、ということはほぼないです。
それ以前の段階で「このお仕事、受けたけど書くものが思い浮かばないな……」という場合(そのままスランプになってしまう人もいますが……)、ジャンルを問わず大好きな作品を読み返したり再視聴したりします。押井守監督の劇場版パトレイバーとかです。大好きな作品を再摂取すると、「自分はそもそも何を楽しいと思うのか」を思い出し、「やったら楽しそうなこと」が浮かんできます。
Q.「期限を守るために意識していることは?」
A.とにかく前倒しで進めることです。「急遽ほかの仕事が入る」「途中まで書いたものを破棄してやり直しになる」「インフルエンザにかかった」「子供が熱出した」「猫が膝の上で寝ていて動けない」等、「予想外のトラブル」はどの仕事でも、絶対に1つ以上発生するものなので、「トラブルにより仕事ができない期間」を最初から設定してスケジュールを組みますし、進めます。
Q.「文章を書く上で気をつけていることは?」
A.とにかく、分かりにくくなっていないかを常にチェックしています。よくあることですが、書き手は文脈も前後関係も登場人物の背景もぜんぶ把握しているし、シーンを絵で思い浮かべることもできます。ですが読み手というのは予備知識ゼロで読んでいるので、思った以上に理解していないものです。なので書いている途中にちょこちょこ立ち止まって「これ予備知識ゼロの読み手に一発で伝わるかな?」と、読み手の立場になって振り返ります。
予備知識の有無だけでなく、「これ90代のおばあちゃんに伝わるかな?」とかも考えます。「90代には伝わらなくてもやむなし!」と判断することもけっこうありますが。
Q.「図書館にまつわるエピソードはありますか?」
A.小学校の頃に学校図書館で読んで、滅茶苦茶怖かった記憶のある本をがどんな本だったかを確かめたくなり、関東で唯一所蔵していた久喜の図書館(埼玉県)まで一日かけて行ってきたことがありました。千葉から来たので受付の人にびっくりされました。
Q.「書けない時の気分転換は?」
A.昼間なら「いったん書き進めるのをやめ、喫茶店に行ってプロットを練り直す」です。書けない時は「プロットの作り込みが足りない」ことが多いので。
夜ならもうやめてゲームとかをしてます。モンスターハンターでは片手剣使いで、スプラトゥーンでは.96ガロン使いです。
Q.「ビブリオバトル出場者にエールを!」
A.みなさんめちゃくちゃうまかったです。聴く人の心理を考えた構成力、語りかけの仕方、何より本に対する熱量が伝わりました。すごい。
Q.「書いた小説の中で一番気に入っているものは?」
A.私は珍しいタイプで、どのお仕事も全部楽しくやっているのですが、これまでで特に書きながらヒョーゥ! となったのは『唐木田探偵社の物理的対応』(KADOKAWA)でしょうか。花子さんやターボババアをアサルトライフルで駆除する業者の話です。
ちなみにこないだ完成した「現代日本が舞台の異世界ものでホームセンターが武器屋、コンビニが道具屋、区役所の窓口でクエストを受け、新宿地下街のミノタウロスを討伐する」といった感じの話もノリノリで書きました。河出書房新社から夏か秋に出る予定です。
Q.「好きな本屋さんは?」
A.大きな本屋さん、いいですよね。以前は東京駅近くの八重洲ブックセンターに行っておりました。代官山の蔦屋書店も好きです。一度入ると4、5時間と7、8000円が消える魔境です。
Q.「どうしていつも面白い話が書けるんですか?」
A.ありがとうございます。私も「俺っていつも面白い話書いてるな!」と思っております。自分が一番楽しんでます。それが一番大事ですよね。
ありがとうございました。それではまた。
市民図書館2階で、似鳥さんの著書とサインを展示しておりますので是非ご覧ください。
◇展示期間:令和7年4月1日(火)〜令和7年4月30日(水)
◇展示場所:市民図書館2F 展示コーナー3
投稿日:2025年04月06日